健康診断で血糖値やHbA1cの数値を指摘された、あるいは糖尿病と診断されたばかりで、「自分は将来、透析が必要になってしまうのではないか」と不安に感じていませんか?
糖尿病と腎臓には深い関連があり、血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病性腎症を発症する可能性があります。
発症初期は自覚症状に乏しく、気づいた時には腎臓の働きが衰えているケースも少なくありません。
しかし、早い段階で適切な治療や生活習慣の改善に取り組めば、糖尿病性腎症の進行を抑えられる可能性があります。
この記事では糖尿病治療に携わる現役看護師の筆者が、忙しい毎日でも取り入れやすい腎臓を守る4つの対策について解説します。
糖尿病があると、なぜ腎臓が悪くなるの?

腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として体の外に排出するほか、水分や塩分などのバランス調整も担っています。[1]
腎臓にある糸球体は、このろ過機能を果たす細い血管の集まりです。
糖尿病で高血糖の状態が続くと、この細い血管が少しずつ傷つき、糸球体が壊れて数が減っていきます。
その結果、次第に老廃物や余分な水分・塩分を十分に体の外へ排出できなくなります。
腎臓は働きが衰えても、初期には症状が出にくいのが特徴です。
むくみ・だるさ・息苦しさに気づく頃には、すでに進行しているケースも多く、重症化すると透析が必要になることもあります。
あなたは大丈夫?腎機の働きが衰えやすい人の特徴
次の項目に当てはまるものが多いほど、早めの生活習慣の見直しが必要です。[1]
- 血糖値が高い状態が続いている
- 血圧が高めと指摘されている
- 喫煙の習慣がある
- 体重が増え、肥満傾向にある
- 睡眠不足や過労により、身体にストレスがかかっている
糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症の1つで、新たに透析を始める患者さんの原因として最も多い病気です。[2]
血糖値が高い状態が続くことで糸球体が傷つき、本来は尿に出ないはずのタンパク質が尿中に漏れ出てきます。
これが、腎臓の働きが衰えてきたサインです。
糖尿病性腎症は進行度によって第1〜5期に分類されています。[3]

とくに第1〜2期までの早期対策が重要です。
この時期に適切な治療や生活習慣の改善に取り組めば、進行を遅らせられる可能性があります。[3]
糖尿病患者が腎臓を守るための4つの対策

血糖値が高い状態が続くことで血管が傷つき、腎臓の働きの衰えにつながります。
腎臓を守るためには、まず糖尿病をきちんとコントロールすることが基本です。
良好な血糖値を保つことは、透析予防だけでなく、心筋梗塞・脳梗塞などのリスクを下げることにもつながります。
食習慣を見直す
健康的な食事は、良好な血糖値を保ち、糖尿病性腎症を予防するために欠かせません。
次の4つのポイントを意識して、食習慣を見直してみましょう。[4]
①1日3食規則正しく食べる
1食にまとめてたくさん食べると、血糖値が急上昇しやすくなります。
朝・昼・夜で食事量に偏りがでないよう、意識しましょう。
②野菜・きのこ・海藻から食べ始める
食物繊維を先に食べることで、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
よく噛んで、ゆっくり食べることも大切です。
③外食・お弁当・総菜は栄養成分表示を確認する
外食やお弁当は、カロリーや脂質をとりすぎたり、塩分量が多くなったりしがちです。
栄養成分表示を見る習慣をつけ、塩分や脂質に気を付けてメニューを選びましょう。
④間食・甘いものは量と頻度を少しずつ減らす
間食の習慣がある方は、いきなりやめようとするのではなく、量や頻度を少しずつ減らすことから始めましょう。
運動する
運動すると筋肉で糖が消費され、血糖値の改善に役立ちます。
忙しくてまとまった時間がとれない方は、日常生活の中で今より10分多く身体を動かすことを意識してみましょう。[5]
- エスカレーターではなく階段を使う
- 一駅分歩く/歩幅を広くして速く歩く
- 座りっぱなしを避け、時々立ち上がって伸びをする
- テレビを見ながら、軽いストレッチや筋トレをする
禁煙する
タバコを吸うと血糖値が上がるだけでなく、インスリンの働きを妨げると言われています。[6]
糖尿病性腎症を発症するリスクも高まるため、早期の禁煙が大切です。
「もう長年タバコを吸っているから、今更禁煙しても意味がない」と思う方もいるかもしれません。
しかし、禁煙後早期から心臓発作や呼吸器感染症のリスク低下といった効果がみられ、免疫機能の回復にも役立つとされています。[7]
だからこそ、禁煙するのに遅すぎることはありません。
一方で、禁煙をきっかけに食欲が増して体重が増加することを心配する方もいるでしょう。
しかし、禁煙2〜4年後には虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが約35%減少するとされており、禁煙による健康効果は多少の体重増加を大きく上回ります。[7]
体重が不安な方は、禁煙と同時に軽い運動を取り入れるか、禁煙が落ち着いてから減量に取り組む方法も有効です。
自分だけで禁煙するのが難しければ、ぜひ禁煙外来など医療機関に相談しましょう。
定期的な検査を受ける
自覚症状が出にくい糖尿病性腎症を早期に発見するには、定期的な検査が不可欠です。
まずは血糖値やHbA1c(過去1~2か月の血糖の状態を反映)で、血糖コントロールの状態を確認しましょう。
糖尿病性腎症の進行を予防するためには、尿の中にタンパク質が出ていないか確認することも重要です。
数値の変化にも注目し、年々少しずつ悪化している場合には医療機関に相談しましょう。
病院を受診する目安

以下に当てはまる場合は、一度医療機関を受診することをおすすめします。[8][9]
早期発見・治療が最悪の事態を防ぐために重要です。
- 空腹時血糖値:126mg/dL以上またはHbA1c:6.5%以上であり、現在糖尿病について医療機関を受診していない
- 血圧が140/90mmHg以上であり、血圧について病院を受診していない
- eGFR:60mL/分/1.73㎡未満
- 尿蛋白:1+以上
- 尿蛋白:±が2年連続で見られている
早めの対策で腎臓の悪化を防ぎましょう

糖尿病性腎症の初期は自覚症状に乏しいですが、定期的な検査で早期発見することはできます。
早めに治療や生活習慣の改善に取り組むことで進行を抑え、透析が必要な状態に悪化するのを防げる可能性があります。
今回紹介した4つの対策は、どれも今日から始められるものです。
まずは1つ、できることから取り組んでみましょう。
不安を感じたら、それを行動に変えるチャンスです。
医療機関を受診して今の身体の状態をきちんと把握することが、腎臓を守る第一歩になります。
参考文献
[1]厚生労働省>報道・広報>広報・出版>WEBマガジン「厚生労働」>バックナンバー>2025年3月号>みんなで知ろう!からだのこと 第7回 慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?
[2]一般社団法人 日本透析医学会>ガイドライン・刊行物>わが国の慢性透析療法の現況>第3章 2024年透析導入患者の動態 PDF p539
[3]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>医療保険>国民健康保険制度>保健事業について>糖尿病性腎症重症化予防 事業実施の手引き(令和6年度版)PDF p8,p9
[4]健康日本21アクション支援システム>健康増進担当者向けツール(e-健康づくりネット)>糖尿病の発症予防>糖尿病になる前に いつまでも健康に過ごすために今日からスタート PDF p7
[6]健康日本21アクション支援システム>生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)>喫煙>喫煙と糖尿病
[7]健康日本21アクション支援システム>生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)>喫煙>禁煙の効果
[8]一般社団法人 日本腎臓学会>医療従事者のみなさまへ>診療ガイドライン>CKD診療ガイド2024 PDF p17
[9]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>医療保険>国民健康保険制度>保健事業について>糖尿病性腎症重症化予防プログラムの改定について(令和6年度版)PDF p39
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